売買による所有権移転登記

所有権移転登記は、不動産の売買などによって所有権が売主から買主に移転したことを公にする手続きです。この登記をすることによって所有者としての権利が法的に証明されます。通常の売買では不動産仲介会社がすべて仕切ってくれて、所有権移転登記を担当する司法書士の手配もするので、売買が成立すればほぼ自動的に登記まで完了する流れになります。しかし売買の手続きと登記はイコールではないので仲介業者が入らない個人間売買などにおいては自分たちで登記の申請をするか、申請代理人としての司法書士の手配をしなければ登記がされません。そして登記がされなければ、実際に所有権を取得しても第三者にその権利を主張することができない、ということにつながってしまいます。不動産の売買においては登記の完了までが非常に重要な手続きです。

 

所有権移転登記が必要な理由はいくつかあります。

①法的効力の明確化 : 登記をすることで誰がその不動産の正当な所有者であるかが明確になります。

                                 第三者の目から見ても明らかにしておくことに大きな意味があります。

②権利の保護 : 登記をしておかないと第三者に対して権利を主張することができません。

        第三者との後々のトラブルを防ぐために登記をしておいた方が良いです。

③融資の条件 : 不動産を担保に融資を受ける際、登記が行われていないと金融機関は応じてくれない可能性が高いです。

       つまり、登記は取引の安全性を高め、金融機関の信頼を得るために欠かせない手続きと言えます。

 

 

不動産の売買では当然のことながらまず売主が不動産を売りに出します。そして買主が『買いたい』という意思表示をします。

その後、売主側は買主に対し重要事項説明をします。売主側には物件の状態や権利関係、瑕疵担保責任について説明する義務があるためです。

その説明に買主が納得すれば売買契約に進みます。売買契約書には物件の所在地や売買価格、引き渡し日などの詳細が記載され、双方が内容を十分に確認し、意思が合致すれば契約を締結します。

 

買主が購入にあたって融資を受ける必要があれば住宅ローンの申込み、審査を受けて、審査が通れば金融機関との金銭消費貸借契約および抵当権設定契約を締結し、融資実行日が決定すれば、最終段階である決済の日取りを決めます。

 

決済では一同が会して、ローンの融資実行や売買代金の支払い、物件の鍵の引渡しが行われ、その日に所有権が売主から買主に移転します。

通常はこの決済に司法書士が立会い、所有権移転登記や抵当権設定登記に必要な書類がすべて揃っているかどうかを最初に確認し、その確認が終わってから融資実行の手続きをし、その後に売買代金の支払いや鍵の引渡しをし、すべて完了して解散した後に登記申請をする、という流れになります。

金融機関としては確実に抵当権設定登記ができる状況になっていなければ融資をしたくないですし、買主としては所有権移転登記に必要な書類が揃っていないにもかかわらず売買代金を支払いたくないですし、売主としては売買代金をもらっていないのに鍵や権利証を渡したくない、というのがあるので、司法書士が「すべて揃っているので大丈夫です」というGOサインを出すまでは手続きに入ることができないためです。

そしてこの手続きが無事に終わり、所有権移転登記が完了すれば買主は誰に対しても『この不動産は自分のものです』と主張できるようになります。

 

上記に記載した売買契約、決済の流れは簡略化したものであり、実際の不動産取引では土地の境界をめぐって隣地の所有者とのやりとりがあったり、土地家屋調査士に表題部の登記をしてもらう必要があったり、建物の取り壊しを売主買主のどちらがするのか、売主がいつまでに退去するのか、リフォーム工事の日程をどうするのかなど様々なやりとりがありますし、かなり時間を要するケースもあります。

また住所変更登記や抵当権抹消登記が絡んでくることもあり、事前準備が必要な手続きがあったりもします。

不動産の売買は大変ではありますが、登記が非常に重要である!という点だけは覚えておいていただきたいです。